スキップしてメイン コンテンツに移動

「デザインには本質を変える力がある」


今春竣工した「富山市立芝園小・中学校」の設計者 工藤和美 氏の講演会と学校見学会がありました。竣工前の一般公開時にも見学しましたが、直接工藤氏の解説を聞ける機会でしたので参加しました。
 講演は施工中の事例紹介、完成後の子供達の様子を画像と動画で流し、各部で設計の意図を説明されます。
 21世紀の学校づくりで大切なのは「安全問題」と「地域の教育力」と言われます。適度に地域開放し、ある部分からはゲートで遮断しています。
 ゲートの内はパサージュ(フランス語・通過とか小径の意)・中庭・アトリウムが独立又は融合しあい巨大な学校にありがちな閉塞感を薄めています。
 小学校の教室において(バルコニー類がないので…)夏期の暑い日、オープンスペース側に机を1列ずらす対応仕様はユニークな考えです。エコとは別な自然な行動に対応する術です。メディアセンターの共有化、ちょっとした段差・ニッチ、オブジェ、カラフルな家具等学校に「街」を感じます。
 小学校において、オープンスペースの本質を突き詰めると職員室の是非に発展します。管理者の空間として校務室は必要ですが、発展していけば諸室の存在仕様は変わります。学校建築は「教室の外が大事」にハッとさせられますし、標準的な解決策をより突き詰めれば学校の列配置は変わります。「デザインには本質を変える力がある」と説明される工藤氏には共感します。
 講演は簡易な言い回しで、考えがよく理解できます。なにより子供達を常に考えて設計に取り組んでいる姿勢が感じられ好感が持てます。氏が講演会のタイトルで使用する「9年間の旅をパサージュにこめて」に願いにも似た「想い」を感じました。     写真は中学校のアトリウムで工藤氏の解説  
    CPD3      (カワ)

このブログの人気の投稿

京都「桂離宮の見学」

先週ですが…念願の「桂離宮」に行って来ました。前々日までの大雪も止み快晴です。 朝早く出発したこともあり時間調整の為「湖東三山・西明寺」を見学の手始めとしました。 本堂や三重塔は鎌倉時代初期に建立され、国宝に指定されています。 釘を使わない純和様建築です。 この寺は紅葉の美しさでも有名です。 ←西明寺 三重塔  まだ時間的に余裕もあり「多賀大社」「石山寺」と廻りました。 「石山寺」は紫式部が「源氏物語」を書いたところと伝えられてもいます。 ここの多宝塔は硅灰石と共に石山寺を表す写真によく登場する建築物です。 下層が方形、上層が円形の平面に裳階(もこし)をつけ、宝形造の屋根をのせた二重の塔。 上下左右の広がりが極めて美しく洗練され、均斉のよくとれた建築です。これも国宝に指定されています。 ←石山寺 二重の塔 いよいよ「桂離宮」の見学です。宮家の別荘とでも言いましょうか。火災に遭わず約400年ほとんど完全に創建当時の姿を伝えています。この時の見学グループは13名です。(ラッキー) 見学は普通予約となりますが、当日受付もありました。古書院や新御殿の内部は非公開ですが、案内員と苑内を1時間ほど掛けて廻ります。(最後尾に私服の皇宮警察官もつきますが…) なにせ「桂離宮の庭」は京都随一です。 まず御幸門から外腰掛(待合)を見学します。繊細で開放的なつくりです。 ←桂離宮 外腰掛(御腰掛) 苑内にはいくつかの小亭(茶屋)があります。 春夏秋冬で使い分けています。 松琴亭は修理中で見れませんでした。 笑意軒は田舎屋風の茶屋です。三室は襖で仕切られていますが、天井は一枚で室内を広く見せています。各茶屋には舟着場があります。 (参考までに……池の水は桂川の川水ではなく井水を使っているとの事) ←桂離宮 笑意軒 見学コースの途中に新御殿の前を通ります。 雁行型は何度かの増築のあとであり、高床は桂川の氾濫に対応したものです。 (実際に何度か氾濫にあっています) ブルーノ・タウトが 簡素で機能的な美しさを絶賛しています。 一切は清純であり限りなく美しい…とも。 「日本美の結晶」とも言われています。 ←桂離宮 新御殿 有名な月見台です。その前には「月

「よくわかる建築板金講座」

「職人に聞く!よくわかる建築板金講座」に参加しました。 木造や鉄骨建築で板金は必須の工事です。屋根や壁に当たり前に使われています。 材料の基礎知識や基本的な納まり等、板金工業会青年部の研修会に参加してきました。 ガルバリウム鋼板の歴史やメンテナンスの説明後、モックアップ模型での基本納まりの実演がありました。 施工中の加工作業(工場製作品の取り付けではない完全手作業の現場施工)はなかなか見る事 が少なく、まじまじと見学しました。巧みなものです。 板金技能体験講座が最後にあり、角波や平板切りに始まり、唐草折り、ダクトハゼ、八千代折り を体験(全て手作業)しました。柳ハサミを使い角波を切る作業や、八千代折りは感心しました。 八千代折りは板金を切らずに「箱」を作る折り方です。板金を切っていませんから角から水漏れは 起りません。シールに頼る納まりは単純なのですが経年後に漏水の心配があります。 アンコウや箱樋等にに使われます。 板金の特性を理解しての作業は「上手」と言うほかありません。 基本の説明だけでしたがとても有意義な時間でした。 CPD3.0    KAWA

「軽井沢紀行」

先月末、新幹線で軽井沢に行って来ました。 千住博美術館を皮切りにペイネ美術館、絵本の森美術館、セゾン現代美術館、軽井沢現代美術館……10ヶ所近くの美術館を巡りました。 千住博美術館は千住博の作品のために建物が設計されていて館自体が芸術です。外壁と中庭側がガラスで、自然の中にいる雰囲気があります。景観条例で勾配屋根を掛ける事と庇を伸ばす事があるそうで、設計者の西沢立衛氏は屋根の幕板処理に苦労したとのこと。綺麗な納まり等好感が持てます。 少しばかり足を延ばして吉村順三氏設計の「軽井沢の山荘」も眺めてきました。竣工から50年以上経っていますが、完成された美しさは建築界では「掌中の珠」と呼ばれるほどの名作です。2階からは「森の中に溶け込む」感じになるそうです。遠目にもその美しさが伝わります。それにつけても軽井沢は別荘が似合います。 「星野エリア」は相変わらずの混雑です。駆け足なところがあり疲れましたが、快晴に紅葉が映える一日でした。 kawa   旅2.0